公益社団法人岩手県猟友会

よもやま話

共同で鹿狩り

宮古地区猟友会会長 清水 登

 ニホンジカといえば県内では「五葉山周辺」にしか生息しないものと思っていましたが、近年では、地球温暖化の影響か過密による餌不足なのか、宮古地区でも十数頭の群れがあちこちで見られるなど、確実に生息域が北に拡大しています。  
 宮古市では、平成10年5頭だったが、20年43頭、22年94頭の狩猟での捕獲が報告されており、この数倍は生息しているものと思われます。  
 このように、近年の個体数の増加に伴い、農作物に対する食害や耕作地の踏み荒らし、積雪期のスギ若木の芽や樹皮の食害など、農林業に対する被害は深刻さを増しています。
 22年度の猟期中のこと、農村集落の会長さんから当猟友会会員で市議会議員のIさんを介して、鹿駆除の相談がありました。 「農家の方々は、年々増加する鹿の害に防護網や電気牧柵を張り廻らすなど各々が対策をとっているがお手上げ状態だといいます。猟友会員が減少し、高齢化している現状も理解されていて、自分たちが勢子をするから駆除してくれないか!」と言うのです。  
 山を知り尽くしている地元の人たちが追い方を担当、猟友会としては当に地域貢献の機会であり、しかも猟期中ということで有害駆除の手続きも不要だし、取 りあえずやってみることになり、早速、腕利きの鉄砲撃ちに協力を求めたところ9人も集まってくれました。
 地元の方6人も加わり、綿密な打ち合わせと事故 のないよう注意を行った後、それぞれの持ち場に散り、昼ごろ60キロほどの若オス2頭を地区集会所に持ち帰ったときは、参加出来なかった人たちも集まって 来て、安堵した笑顔で口々に被害の悔しさを浴びせていました。

 その夜は、喜ぶ地元の方々と少し期待に応えた撃ち方が鹿の焼肉で遅くまで交流したことは言うまでもありません。  
 初の試みである共同での鹿狩りは、追い方の服装やトランシーバーの確保など事故の未然防止策と万一の際の保険等の課題もありますが、被害農家にとってもハンターにとってもメリットがあることから、試行錯誤しながら今後も取り組んでいこうと思っています。