公益社団法人岩手県猟友会

よもやま話

ポツンと一軒家

胆沢猟友会 相澤 征雄

 突然の撮影隊の来訪に戸惑い「たしかにポツンと一軒家だが、、、」私は思わず苦笑いしたものだった。ニホンミツバチを飼っている我が家には蜂蜜を求めて熊もやって来る。やむなく許可を得て駆除もした。 移住してから15年いろいろなドラマがあった。狩猟も大切なひとつ。イノシシの重なる被害に「岩手日報」論壇に投稿したのが 2017 年のこと。(別掲) その後投稿した手前もあり「自分で動かなくては」と捕獲に出歩いた。幸いその後、当地区が県の「猪被害防止対策モデル地区」に指定され、様々な講演会・講習会が開かれて被害農家や猟友の参加者も次第に増えてきた。地区内でただ一人の「罠免許」の所持者だったこともあり 被害農家からはあちこちから声がかかり多忙であった。それまでは狩猟期間と数回の熊の駆除出動だけだったものが「有害駆除」や実施隊も加わり、最近は鹿やイノシシがほぼ年間通しての捕獲出動になっているのではないだろうか。高齢の身にはきついのだが「あそこも歩いている」と足跡を見つけると気が気ではない。

 幸い取り組みの甲斐あって「地域主体の被害対策」は進み、被害農家の「電気柵の設置」は飛躍的に増え、捕獲にも協力的な方が増えてきた。地区で一人であった「罠免許」も現在4人に増えた。ひそかに考えて居た「各集落にひとりの罠免許保持者」実現も夢ではない。行政の狩猟税の減免や電気柵の補助、サポーター制度。そして最近の「免許取得費用の補助」も有難い。

 最初の年は数頭の捕獲だったものが今や50頭ほどの捕獲に至っている。他地区からの応援も実に有難い。私はいろいろ失敗ばかりして猟友には大変お世話になっている。

 秋田白神山地近く育ちの私には、昔のマタギの知恵が忘れられない。山の恵みに感謝し捕獲後もすべて無駄のないような活用を心がけていた。肉を除き大半は処分される現状に、せめてとの思いで熊やイノシシの爪をストラップなどにつくりプレゼントして喜ばれている。肉をジビエ料理にする工夫もあれこれ試してみている。肉は重曹を入れた水に浸け、圧力鍋で煮るとおいしく食べられるようだ。現在はセシウム関連でクマ、ニホンジカ、ヤマドリの肉は県内全域で出荷制限がかけられているが、県全体での出荷の解除が待ち遠しい。解体処理施設も備え販売が可能になれば一段と捕獲にも拍車がかかるだろう。気になるのは高齢者が多いこと。若い人が増えてほしいものである。箱罠にはなかなか入ってくれず むしろ「くくり罠」の支給が増えると現場では有難い。また時にカモシカの錯誤捕獲は同じけもの道を通るので避けられない。猟友は苦労しているのではないだろうか。出来れば振興局などに「麻酔銃」の設置があれば有難い。ドローンを活用した巻き狩りも早く実現したいも の。

 テレビの放映後しばらくしてから、水沢の猟友のNさんからディレクターとの雑談で我が家が候補のひとつに出た話を伺ったのは半年も過ぎた時だった。猟友の縁は実に有難く不思議なものである。