公益社団法人岩手県猟友会

よもやま話

ウソのようなホントの話

山田猟友会理事 武藤峯雄

 平成16年12月26日、熊猟に出猟すべく、兄貴分のミッチャンと某地区に出かける。

 途中の林道はアイスバーンでスリップしながらも何とか現地に到着。さっそく車を降りてリュックとテッポー担いで急峻な沢を登る事約1時間、普段の運動不足がたたり足がガクガク、それでも何とか歯を食いしばり濃い笹薮の中へ分け入る。相棒のミッチャンは5合目付近を、私と愛犬リン君「猟歴1年生」は、7合目付近と二手に分かれて山を横なぐりに、熊の捜索開始。前夜の雪で笹の上には雪がいっぱい、それを杖でたたき落としながら進むが、雪が首に入るし、服にまとわり付くしで、10分もたたない内に服はビショグショ。来るんじゃなかったと後悔しながら30分も歩いた頃、大きな切り株「直径約1メートル」の前に出た。周りを見ても何もなし、時間も12時を過ぎていたのでお昼にしようと、その切り株に乗り、リュックとテッポーを置いて、おにぎりを取り出し食い始めた。

  リン君に分けてやろうと半分にして、犬の口元まで差し出すがなかなか食べない。

 変だなと思ったが口に押し込んだら飲み込んだので何も気づかず昼メシを終えた。さらにデザートのみかんを取り出して、何 気なく犬を見てると、しきりに切り株の根本の雪の中へ鼻を押し込んで臭いを取っているので、何かいるんだろうかと思っていると、その途端パッと黒い塊、出てすぐさま引っ込んだ。

 ワッ熊だ、慌ててテッポー取り出し覆いを外してタマを込めようと右の弾帯からタマを抜いたら五号弾、イカン、イカン、スラッグ弾はどこだどこだと慌てふためいて弾を込める時間の長く感じる事。やっとの事で装てん完了、よしいただき…それから犬に行け行けと命ずるが猟歴1年 生のリン君、シッポをシリに挟んで動けない。しかたがないので私が犬の代わりにワン、ワン、ワンと吠えるが、熊公なかなか出てこない、さあどうしようかと思案して、今度は右足で切り株の上からドンドンと踏み込むと、サッと飛び出した。すかさず肩口へズドンと一発、しかし熊公そのまま犬へ突進し揉み合いにな る、当らなかったと一瞬思ったが、すぐさま犬から離れてヨタヨタ歩き出した。ヨシ当たった、熊公、10メートル程歩いた所で立ち止まり、こちらをふり向いた所へすかさず止メ矢をかけるとそのまま沢へ転げ落ちていった。

 ヤッタ、ヤッタ、バンザイ、嬉しくて嬉しくて枯枝と握手してしまう。そのうちミッチャンもやって来て二人で喜んだ。
 これはいつまでたっても熊の取れない私に、山の神様が恵んで下さったものに違いないと思った。感謝、感謝。

 究極のアウトドア、男のロマンではなかろうか。